多くの日本企業には整理整頓を重視する文化が根強く定着しています。

しかし、組織の中には整理整頓が得意な人ばかりではありません。
組織が成長すれば、いずれ、整理整頓を苦手とする人との共存が必要になるでしょう。
「会社の整理整頓文化に付いてこれない人は、採用しないし、辞めさせる。」という
身も蓋もない企業文化で、いつまでもやっていけるとは思いません。

これからの人口減少局面では人材確保がより困難になって来ます。
少数の高品質人材だけでビジネスをするという方法で、
「中」品質人材で物量で押してくる海外企業との競争に、最後に勝てるのでしょうか?

「高品質」は「物量」に勝てない

私は、高品質VS物量の戦いでは、最後には物量が勝つと思っています。
第二次世界大戦において、当初は連戦連勝だった日本軍は結局アメリカ軍に負けましたが、
長期的な航空機や空母の建造数の桁違いの差の前では、
個々のパイロットの質や士気の優位性など、虚しいものであったと思います。

だいぶ昔の話になりますが、私が初めてサンフランシスコ国際空港に着陸した時、平行する二本の滑走路に同時に着陸する隣の機体が窓の外に見えたときに、「こんな国と戦争したら負けて当たり前だなあ」という圧倒的な物量(土地資源だったり、エネルギーだったり)の違いに衝撃を受けたことを覚えています。
(当時日本には同時に二機が離発着できるような空港はありませんでした。
最近は羽田もオープンパラレル滑走路になったので、城南島海浜公園からの見物は楽しいです)

「整理整頓できる人」は少数派

多くの企業が「あたりまえ」と思う「整理整頓できる人」は、総人材の中では少数派であり、整理整頓が苦手な人たちのほうが圧倒的多数派です。

少数の高品質人材への依存は、人手不足を招き、成長のボトルネックとなるリスクをはらんでいます。だから、整理整頓が得意な人にも、整理整頓が苦手な人と上手に折り合って行くための技術が必要です。

整理整頓のルールはできるだけ簡単にして、文書の作成・登録を楽にするべきですし、「力づく」でファイルを見つける検索システムで補うことで、文書の検索・発見を楽にすることが、現実的な解決策だと私は信じています。

トヨタの片付け VS Googleの検索

日本の企業には、整理整頓を重視する文化があり、「片付けができる会社は業績が伸びる」という信仰にも似た考えが、広く普及しています。

しかし、インターネットの入り口として、事実上の世界標準になったGoogleでは、社員が手間暇かけて整理整頓など、一切行っていません。キーワード入力による全文検索がすべてです。

「Yahoo!カテゴリ」が「Google検索」に完敗したことは万人が知っている事実です。ヤフー!は、Webサイトなどを分類して紹介するディレクトリサービス「Yahoo!カテゴリ」を2018年3月29日に終了すると発表しましたが、人力で整理整頓するサービスに勝ち目がないことはとっくの昔に明らかでした。

日本の組織が繰り返す失敗パターンに、「安価な資源の利用が下手」で「質―品質や効率を過度に追求する」傾向があると私は思います。最終的な結果は、質 ✕ 量 であり、相対的に安価な資源を惜しみなく投入することで結果が出せる場合には、質より量の方が重要です。

高品質な人材を育てることと、安い計算機資源を調達することと、どちらが簡単か?情報の整理整頓にこれ以上の労働力を投入していいものなのか、どうかよく考えて下さい。それでも「トヨタの片付け」が「Googleの検索」に勝てると信じ続けますか?