概要

鉄飛テクノロジーでは今年6月、横浜市緑区にサテライトオフィスを開設しました。新型コロナウイルス対策として社員全員を通勤ラッシュから解放しようという目的での拠点増設です。目黒本社で運用していたIPビジネスフォンシステムをVPN接続された横浜サテライトと共有することで、拠点間の内線通話と目黒本社の外線着信に両拠点で対応できるようにしています。

ビジネスフォンの導入は専門業者に依頼するのが一般的で費用も高いと思われるかもしれませんが、IP電話はLAN配線に接続して使うものなので、ハブにLANケーブルを挿してつなぐだけで構築することができるのです。IPネットワーク構築の知識が必要ですが、VoIPルータのマニュアルを読めば自力でできました!という例として弊社での成果を紹介します。

ネットワーク構成の推移

1.ひかり電話導入

目黒本社の外線電話は、数年前から「ひかり電話」となっています。もともと一本の光ケーブルに光電話アダプタが接続され、音声通話用とFAX用の二つの電話番号での発着信を行っていました。

2.IP電話の導入

2年ほど前にVoIPルータを導入してIPビジネスフォンを構築しました。

LAN配線(PCやサーバも混在します)につないだIP電話で、外線通話・内線通話ができるようになりました。2本の光回線は、一本がインターネット/データ通信用、一本がひかり電話用となっています。

3.サテライトオフィス開設

目黒本社と横浜サテライトとの間で拠点間VPNを構築し、サテライトオフィス内のIP電話で目黒本社の外線電話の発着信ができるようになりました。

用意するもの

VoIPルータとIP電話

鉄飛テクノロジーでは、この組み合わせを使っています。

VoIPルータ=光電話直収できるSIPサーバ ICOM SR-7100VN
IP電話 Panasonic KX-HDV130(複数台:人数分)

VoIPルータ選定のポイント

VoIPルータと言ってもその機能は千差万別です。Voice Over IP、つまりIPネットワークで音声通話データを送受信できる機能があればVoIPルータを名乗れます。VoIPを実現する代表的なプロトコルがSIPプロトコルで、VoIP機器は、「SIPクライアントの機能を持つもの」「SIPサーバの機能を持つもの」「SIPサーバとSIPクライアントの両機能を持つもの」に分類できます。

  • NTTのひかり電話を直収するには、NTTのSIPサーバと通信可能なSIPクライアント機能を持った機器が必要です。外線側はIP網、社内側はモジュラーケーブルによるアナログ電話網という構成をとることが可能です。YAMAHAのNVRシリーズなどはこのタイプです。
  • 社内でIP電話による内線電話システムを構築するには、SIPサーバ(IP-PBX)機能が必要です。外線側はメタル回線のアナログ電話網、社内側がIP網となります。

ICOM SR-7100VN について

私たちが選定したSIPサーバ(IP-PBX)の「ICOM SR-7100VN」は、SIPクライアントとしてひかり電話を直収できると同時に社内のIP電話(複数台)に対して内線電話交換機能を提供します。

一般に小売りされているVoIPルータで、SIPクライアントとIP-PBXの両方の機能を持つ製品は限られています。2020年11月現在、アイコム社のSR-7100VNは、ほぼ唯一のナショナルブランドの製品だと思います。他にはショップブランド・プライベートブランドの製品がちらほらあるのみでしょう。素晴らしい製品なので、アイコム社にはぜひ安定供給を続けてほしいと切に願いますし、応援の意味も含めて本記事では全力で推しておきます。

なお、ICOM SR-7100VNは単体でVPNルータ機能も持っているようですが、弊社ではYAMAHAのルータにて拠点間VPNを構築済みであるため、その機能は使っておりません。(ひかり電話用とインターネット用とで二本の光ファイバを独立に引き込んでいるという事情もあり、拠点間VPNについては運用実績・運用ノウハウのあるルータを使いたかったのです。)

IP電話機の選定ポイント

IP電話は、VoIPルータのSIPサーバとの接続の相性が良いものを選択することが必要です。(そうしないと、設定でドはまりします。)

IPビジネスフォンを構築していて最も難しいのは、頑張れば解決する問題なのか、それとも(試している機器の組み合わせでは相性が悪くて)頑張っても無駄なのかが分からないときです。この組み合わせ(ひかり電話+SR-7100VN+Panasonic IP電話)では必ず動きます。みなさんも頑張ってみてはどうでしょうか?