Microsoft Office代替のオフィススイートとして、またひとつ「Euro-Office」が2026年6月に公開されました。
鉄飛テクノロジーでは従来より、FileBlog上のファイルをONLYOFFICEでWeb編集できるようにしていました。
Euro-OfficeはONLYOFFICEのフォークであるということですが、これはどういうことでしょうか。
Euro-Office誕生の背景
鉄飛テクノロジーがONLYOFFICEに対応したのは2020年のことでした。新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るうなかリモートワークが増えることに対応しようと考え、Webブラウザで動作するMicrosoft Officeの代替ソリューションを探したところ、一番よくできた製品だったからです。ヨーロッパ市場でも多くのユーザがONLYOFFICEを文書管理システム(NextCloudなど)と組み合わせて利用しており、実績豊富だったことも選定理由でした。
しかし、2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まると、販売のしづらさを感じるようになったのです。
ONLYOFFICEの製造元は、現在はシンガポールに本社を構えていますが、もとはラトビアの会社でした。創業者を含めロシア人によって経営されています。私たちは2020年よりONLYOFFICEをFileBlog連携製品として継続的に販売をしてきましたが、西側陣営である日本の立場では対ロシア経済制裁が始まって以来、ロシア製品を公然とPRすることは憚られる雰囲気になってしまいました。
Euro-Officeが登場したのも、EU圏内にいるONLYOFFICEユーザの「ロシアを応援するわけにはいかないが、この製品はよくできている」という気持ちの産物であるように思います。
ただし、開発・リリースの方法は少し乱暴で、ONLYOFFICEがソースコードをオープンソースとして公開していたのをいいことに、フォーク(分岐)を作って名称をEuro-Officeに変更し、ONLYOFFICEの名を一切出さずにリリース(2026年3月)したのです。当然ながらONLYOFFICEの製造元は、オリジナルへのリスペクトを欠くと怒り心頭です。実際、リリースの5日後には「AGPLv3には2021年に追加されたロゴ保持義務の条項があり、それを外すのはライセンス違反」と主張しました。これに対しEuro-Office側は「その追加条件は強制力がなく、削除は妥当」と反論しており、争いは未解決のままのようです。
なお、私たちが試した「Euro-Office Version 9.3.1.1170」(2026年6月9日リリース)では、インフォメーションとして「Euro-Office was based on ONLYOFFICE by Ascensio System SIA」との表記があり、ONLYOFFICE製造元への配慮がみえました。
EU圏内でのビジネス展開において、ONLYOFFICE側には気の毒な部分もありますが、紛争が終結して対ロシア経済制裁が緩和されないことには、(現在は本社を移転しているが)ロシア製というイメージを持つ製品の販売には引き続き難しさを感じており、一方でEuro-Officeがそれを解消してくれることにも期待しているという、中途半端な状況にあります。
Euro-Officeの評価
現時点でONLYOFFICEとEuro-Officeは機能的に同等のように見えますが、違いがあるとすればWindows版のセットアッププログラムの有無です。
Euro-Officeは、EUのユーザ(特に「アンチマイクロソフト」の気風が強いドイツやフランスのユーザ)をターゲットに、Linux環境を前提に作られているため、Ver9.3.1.1170現在、Windows版のセットアッププログラムが用意されていません。なお、Linux環境で動作するパッケージがDockerイメージとして配布されており、WindowsでもDocker上であれば簡単にインストールできます。
ONLYOFFICEにはWindows版のセットアッププログラムがあるため、Windowsにそのままインストールして動かすことができます。
この違いは、利用できるフォントの違いに直結します。「MSゴシック」や「游明朝」などのフォントを使う場合、Windows環境であれば問題なく利用できます。しかし、WindowsフォントをLinuxマシンにコピーして使うことは(Windowsマシン上のDocker環境でも)Microsoftのフォントライセンスポリシーで許可されていないため、Euro-Officeではオープンソースなど利用できる日本語フォントは限られています。
その点においては、Windows互換性を求めるならば、まだONLYOFFICEに一歩アドバンテージがあるといえます。
Office互換スイート
Microsoft Officeは偉大な製品です。
互換製品を作るのも簡単ではなく、Word/Excel/PowerPointの3種類を編集できるものとして存続している製品は限られています。
| 源 流 | 製 品 |
|---|---|
| サン・マイクロシステムズ | StarOffice → OpenOffice → LibreOffice |
| 中国 | Kingsoft Office → WPS Office |
| ロシア | R7-Office → ONLYOFFICE → Euro-Office |
資金力と政治力がないと開発と維持は難しいということだと思います。
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