私たちは、ファイルサーバについて、「見つかるなら整理は不要」という命題を掲げました。
これは、ファイルサーバに保存されるのが、モノではなく情報であるということに大きく依存しています。

整理整頓とひとまとめに呼ばれますが、この言葉は下記の2つに分解できます。
「整理」=必要なものと不要なものとを分類して、不要なものを捨てる
「整頓」=必要なものが必要なときに見つかる状態を維持すること
それぞれについて、情報が持つ性質を踏まえて考えてみましょう。

情報は、場所を取らない。邪魔にならない。だから整理しなくても大丈夫

モノは溜め込めば場所を取り、かならず邪魔になります。
仕事の動線を妨げるようになりますから、無駄なモノは速やかに整理する(捨てる)必要があります。

しかし、情報は、相当大量に蓄積しても場所を取りません。
ファイルサーバのフォルダ階層の奥底にどれだけ大量のファイルがあっても
そのフォルダを開かないユーザにとっては全く邪魔になりません。

したがって、情報を蓄積するファイルサーバにおいては、
モノを扱うときほどに、整理の必要性は無いのです。

確かに、ファイルサーバのディスク使用量は増えますが、ハードディスクドライブの
容量あたり単価は常に下がり続けていますので、一切の整理(削除)を行わずに
単調に蓄積しつづけても十分なだけのストレージ空間を維持することは、全く非現実的ではありません。

情報の「整頓」は、検索エンジンの助けを借りれば大幅に簡略化できる

物理的な実体を持つ「モノ」の場合に、整頓とは
ほぼ、「定位置を決め、周知して、そこに置くこと。使ったら戻すこと。」
と同義です。

これは、同時に二つの場所に存在できないという、モノの性質があってのことです。
使って使いっぱなしで戻さない人がいれば、必要なモノはすぐに紛失してしまいます。
しかし、情報にはモノと異なり、複製・同時参照が簡単で、使っても減らない・無くならない、
という性質があります。利用者の数だけ複製して使い放題ですから、
「使ったら戻すこと。」という従来のモノの整頓に関するルールは無意味なものとなります。

代わって情報の「整頓」の中核をなすのは、
必要なときに必要な情報が見つかるよう、適切な検索システムを構築することとなります。

従来のモノの整頓方法は、「定位置を関係者全員が記憶する」ことに依存していましたが、
現代の情報の整頓においては、個人の記憶能力への依存が少なく、
検索スピードや検索精度(漏れの無さなど)に優れる検索システムを構築することが可能です。
人間の記憶能力は有限で高価な資源ですから、無駄使いしない方が良いのです。

また、「定位置を作る」ことにかける手間すらも、無駄になる可能性があります。
私達も10年ほど前まで、よく使うWebサイトのURLを、ブラウザのお気に入りに多数登録していました。
しかし、ブラウザの検索バーですぐに検索できるようになった今では、
ブックマークに登録する手間・整理する手間が面倒になり、めったにお気に入り登録しなくなりました。
(例えば、お気に入りに”Youtube”を登録するより、毎回「ようつべ」[ENTER]で検索するほうが楽ですよね。)