電子帳簿保存法ー電子取引の対応は難しくない

令和4年1月施行の改正電子帳簿保存法により、電子取引データの電子データ保存が義務付けられ、(印刷して)紙で保存することができなくなります。電子データ保存については、日付・取引先・金額の組み合わせで検索できるようにして、税務調査において求められた書類をその場で提示できるようにする必要があります。

これを実現するためには、クラウドサービスを利用したり、新しいシステムを導入したりする必要があるのでしょうか?

システムベンダーの立場では、この機会に、自社の製品・サービスを使ってもらいたいと考えるので、多少、我田引水的なコメントでお客様を誘導したくなるものですが、実際のところは、電子取引の対応に限って言えば、これまで通りのシステムでほとんど対応可能です。

電子取引データの保存に関する要件

必要なシステム要件は以下のようにまとめられます。

電子取引データの保存方法をご確認ください(令和3年12月改訂)(PDF/804KB)

  1. 令和6年1月1日以降は電子取引の取引情報は、これまでのようにプリントアウトして保存できず、要件に従った電子保存が必要
  2. 受領した電子データのみならず、送付した電子データ(控え)も保存が必要
    • 「受け取った場合だけでなく、送った場合についても保存が必要」
    • 「PDF やスクリーンショットによる保存も可」
  3. 改ざん防止措置が必要
    • 「「タイムスタンプ付与」や「履歴が残るシステムでの授受・保存」といった方法 以外にも「改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて守る」でも構いません。」
  4. 検索要件=「⽇付・⾦額・取引先」で検索できるようにする
    • 2年(期)前の売上が 1,000 万円以下であって、税務調査の際にデータのダ ウンロードの求め(税務職員への提示等)に対応できる場合には、検索機能 の確保は不要です
    • 専⽤システムを導⼊していなくても、①索引簿を作成する方法や、②規則的な ファイル名を設定する方法でも対応が可能です
  5. ディスプレイ/プリンタを備え付ける※税務調査のときに検索した書類を調査官が閲覧でき、プリントアウトして持ち帰れるように、という趣旨でしょう

上記のうち、多くの皆さんが「どうしたらいいだろう」と悩むポイントは、3番と4番、改ざん防止措置と、検索要件の充足だろうと思います。

改ざん防止措置は、事務処理規定を定めるだけでも良い

しかし、電子取引データの改ざん防止措置については、「一度保存したファイルは削除したり上書きしたりしないように気を付けて運用する」という旨を書面に書いた「事務処理規定」を定めて守るだけでよいという、意外にも緩いのです。これならば、一般的なファイルサーバの共有フォルダでも十分に運用できますね。

検索要件は、二段階検索でクリアできる

難しいのは、「日付・金額・取引先」で検索できるようにすることだと思います。日付・金額・取引先の組み合わせで検索できるようにするには、日付・金額・取引先を入力しなければいけません。これらの情報は、一般的に会計システムに仕訳として入力される情報ですので、それを活用した方法が使えないかと考えるのは自然です。実は、それができるのです。

  • 会計システム(帳簿システム)の検索機能で、日付・金額・取引先から、仕訳が見つかり、仕訳の摘要欄で、文書を特定できる文書IDがわかり
  • 文書管理システム(ファイルサーバなど)では、文書IDから、当該文書イメージ(PDFやJPEGファイル)にすみやかにアクセスできる

という、二段階で、電子帳簿保存法が求める検索要件が満たせます。

弊社自身も所轄税務署に問い合わせの電話を行いましたが、「その場で関連文書の提示を求められたときに、提示できるようになっていれば良い。」ので、認められる。という回答が得られました。

既存の会計システムの検索機能を利用できます

もともと、取引日付と金額は勘定科目とともに、(弥生会計や勘定奉行などの)会計システムに仕訳として入力されていたデータです。また、それぞれの仕訳の摘要欄に、取引先名や取引関連文書ID(売上取引については受注番号、仕入れ取引については購買管理番号、経費取引については経費申請番号など)が記入されることも一般的でしょう。

ですから、既存の会計システムの検索機能を用いて、「日付・金額・取引先」をキーとする検索を行い、その結果として、取引関連文書の文書ID(受注番号・購買管理番号・経費申請番号など)をピンポイントに発見することが可能です。

二段階検索でも、電子帳簿保存法の検索要件が満たせます。

文書ID(受注番号・購買管理番号・経費申請番号)などがわかったときに、その文書のイメージ(PDFファイルやJPEGファイルなど)がすぐ見つかるようにファイルサーバのフォルダ階層が構成されていたり、文書IDで文書を検索できるような、ファイルサーバ検索エンジンが導入されていれば、この二段階検索が可能になり、合わせ技で、電子帳簿保存法の検索要件が満たされたことになるのです。

文書管理システム単体で検索要件を満たすのは手間がかかります

電子帳簿保存法が、「日付・金額・取引先で検索できること」という要件を提示したため、電子帳簿保存法対応をうたう文書管理システムの多くは、登録される各ファイルひとつひとつに、日付・金額・取引先などを入力させる仕組みを備えるようになっています。

そうすることで、文書管理システム単体で、電子帳簿保存法の検索要件を満たすことができますが、現場で作業をする担当者の立場で考えると、従来とくらべて明らかに事務作業の手間が増えてしまいます。

二段階検索が認められるならば、取引日付・金額・取引先などの情報は、帳簿(会計システム)にのみ入力すればよく、また関係書類のPDFファイルには文書ID(注文番号・購買管理番号や経費申請番号など)を付与するだけでよいことになります。この方が従来と比べても事務作業量を増やさない方法なのではないでしょうか?

国税関係書類の電子保存は、税務署にしかメリットがないのか?

国税関係書類の電子保存は、確かに税務調査を行う調査官にとって大きなメリットがあるものです。

従来ならば、特定の取引先との取引記録を提示をもとめたところで、その文書が物理的に離れた外部の倉庫に預けてある場合、段ボール箱を取り寄せるのに丸一日かかったり、その中から必要な書類をかき分けて見つけるのに1時間かかったりといったことがしばしばありました。これは、場合によっては時間稼ぎによる逃げ切りを可能にするもので、税務調査の費用対効果を下げていました。国税関係書類の電子保存に、検索要件を満たすシステムが加われば、そういった時間稼ぎは不可能になります。

そういうこともあって、納税者にとっては電子保存は手間が増えるばかりデメリットが少ないという言説を目にすることも多いのですが、私たちは必ずしもそうとは言えないと考えます。

悪意で脱税しようという事業所は論外として、真面目に正直に申告している事業所にとっては、税務調査に積極的に協力した結果、経理処理のミスに起因する誤った会計処理をいくつか指摘されたとして、経営が傾くほどの追徴課税に遭うことは無いはずです。むしろ、税務調査での指摘から正しい経理処理について学ぶことが多いと前向きに考えてよいのではないでしょうか?また、電子保存された書類に基づく税務調査は、調査期間が短くなることも考えられます。従来ならば2日間対応せねばならなかったものが、半日で終了するようになるとすれば、納税事業者にとってもメリットだといえるでしょう。

電子取引関係文書を、ファイルサーバで電子保存してみては?

ここまで読んでくださった皆さんならば、既存のファイルサーバと、既存の会計システムを組み合わせれば、電子取引関係文書の電子保存は簡単に実現できることをわかっていただけると思います。

鉄飛テクノロジーでは、ファイルサーバ検索エンジン「FileBlog」を開発・販売しており、FileBlogを使えば、文書IDをキーにファイルサーバを瞬時に検索することが可能です。ファイル名・フォルダ名を工夫すれば、ファイルサーバ検索エンジンなしでも電子帳簿保存法の検索要件を満たすことは十分に可能ですが、文書数が増えた場合にも軽快な検索を実現できるFileBlogの導入も、この機会にぜひご検討ください。

スキャナ保存はもう少し難しい

今回は、電子取引データ(電子メールやWebサイトを介して送受信する取引データ)の電子保存は比較的簡単だということを紹介しました。

電子取引の割合が増えつつある現在、その中に混じって紙文書で受け取った取引関係書類があると、それらについてもスキャナで電子化して、一律に電子データとして管理したくなります。

ですが、国税関係文書のスキャナ保存には、もうすこし厳しい要件が必要です。弊社では、FileBlogにタイムスタンプオプションを加えることで、スキャナ保存の要件を充足できるようにしています。これについては次回以降の記事をご覧ください。

 

FileBlogタイムスタンプソリューション製品紹介